松田優作の名作『人間の証明』とリメイク版との比較と感想


出典 https://www.happyon.jp/watch/60044949

※ ここに書いてることは完全ネタバレです。ご注意下さい。

『人間の証明』あれから40年・・

ストウハ…

キスミー…

この2つの謎のキーワード、そして西條八十の詩・・・

『母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね・・

ええ、夏、碓氷から霧積へ行くみちで 渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ』

さらに、ジョー山中のヒット曲「人間の証明」のテーマソング

「Mama, Do you remember…」のフレーズ・・・♪

どれもこれも懐かしいんですよね。

あの角川映画時代の『人間の証明』が世に出てからもうすでに40年経ちます。

そしてあのハードボイルドのヒーロー松田優作ももうこの世にはいないのです。

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『人間の証明』の謎解きを先に・・

「ストウハ」は「ストローハット」(麦わら帽子)の意味

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出典 image.middle-edge.jp

「ストウハ(麦わら帽子)」の正体は「ニューオータニ」

「キスミー」は「霧積」という地名であることが解ります。

スペイン系の発音ではRを省く習慣がありだからストローハットのRを省くとストウハ・・

そしてキリズミのRを省くとキズミー・・いやキスミー・・

点と線が繋がったことがこの物語の肝です。ではそれ踏まえてあらすじをどうぞ。

人間の証明1977年版のあらすじと解説

この物語のオープニングはニューヨークのスラム街から始まります。

ニューヨークのスラムで育った黒人青年ジョニー・ヘイワードは、

「キスミーへ行く」という言葉を言い残して日本へ向かいます。

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出典 buta-neko.net

一方日本に映像が映り・・・事件は起こりました。

棟居(むねすえ)は小さい子供の頃、目の前で父親がアメリカ兵の集団リンチで殺された体験を持ち人間不信に陥り自分しか信じられない人間になってしまいました。

その棟居が刑事となり本庁に抜擢されてすぐ、東京・赤坂の高層ホテル(ホテルニューオータニ)の、展望レストランのある最上階に到着したエレベーター内で

黒人の青年が何者かに胸部を刺されたまま乗り込んできて息絶える事件が起きました。

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出典 summaars.net 

棟居らの必至の捜査も虚しく、なかなか容疑者が浮かばない・・。

捜査を担当することになった麹町署の棟居弘一良刑事達は被害者の名前がジョニー・ヘイワードであり、彼をホテルまで乗せたタクシー運転手の証言から、車中でジョニーが

「ストウハ・・・」と謎の言葉を発していたことを突き止めました。

そしてさらにその車内からは、ジョニーが忘れたと思われるボロボロになった

『西條八十詩集』が発見されました。

またジョニーが殺害された同時刻に、ある女性が何者かにひき逃げされる事件が起きました。

ひき逃げをしたのは有名ファッションデザイナー八杉恭子の息子である郡恭平。

豪雨の中で運転していた最中に飛び出してきた女性に気づかずに引いてしまったのです。

駆け付けた時には死んでたので恭平は

何もなかったようにするために遺体を東京湾に沈めました。

しかし翌日、女性の夫から捜索願が出された事により

事件が明るみになり恭平は恭子に昨夜の出来事を全て告白します。

事情を知った恭子は恭平にアメリカに逃げるように指示し、

恭平は静かに日本を後にしました。

そのころ警察ではジョニーが残した「ストウハ」という言葉について調べていました。

棟居刑事はジョニーがストローハット(麦わら帽子)と言おうとしたんではと推理。

実際に事件現場であるホテルのライト部分が麦わら帽子の形であったため

ジョニーがそれを見てそう思い込んだと解釈したのです。

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出典 blog-imgs-42.fc2.com


(ネオンがつくと麦わら帽子に見えますね。)

まぁ、その推測をいきなりするとは凄いひらめきではあるのですが(笑)

でもなぜジョニーは八十詩集を持ち込んでいたのかはまだわからない。

しかし詩の中に、

『麦わら帽子』と『霧積』

という地名が記されていてそれが

ひき逃げ事件と関係していて

ついに棟居は八杉と接点を見つけ出すのです。

実は棟居は昔から八杉のことを知っていたのでした。

何故なら昭和24年、闇市でアメリカ軍人に強姦されそうだった八杉を

棟居の父が助けようとして殺されたからです。

しかしこんな偶然があっての発見はちょっと突飛すぎる感があり

個人的にはあまり好きではないのですが、そこも昭和のご愛敬なのです。

ジョニーがアメリカを去る際に残した「キスミー」という言葉から、

群馬県の『霧積』の地名を割り出した棟居が霧積に向かうと

ジョニーの情報を知っているであろう中山種という老婆が何者かに殺されていました。

しかし、種の知人から聞き込みをし

霧積では八杉恭子が戦後、進駐軍向けのバーで働いていたことが分かります。

八杉恭子はすべて過去に関わってきた人を次々殺害していたのです。

そのことから棟居は八杉がジョニーの母親で、ジョニー殺しの犯人だと推理します。

そしてその推理を立証するために、

棟居はジョニーの本当の母親を探すため、ニューヨークへ飛びます。

そしてジョニーの住んでいたアメリカ南部へ捜査の手を伸ばした棟居は、

ジョニーが日本へ来たのは、日本人の母親に会うためだったと知るのです。

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出典 blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp

棟居はニューヨークでの相棒となるシュフタン刑事の手の甲の刺青から、

父をリンチし殺したのが彼であることを知ります。

なんとも偶然にもほどがあるシナリオではあるのですが(笑)

そしてニューヨークで棟居はジョニーが日本で生まれたことを突き止めるのです。

実にその頃のハーレムの戸籍の記載の仕方もずさんであり

それはその時代の背景を映し出していたのです。

そしてついに棟居はひき逃げ犯の恭平をニューヨークで追い詰めます。

すると、恭平は拳銃を向けたため、なんとあっけなくシュフタンに射殺されました。

なんとこの頃のバイオレンスさといったら凄いの一言!

恭子をジョニー殺しの犯人だと確認した棟居は、

恭子に人間としての情が残っていることに賭け、自供させることを決意したのです。

そう、結局、証拠となる人物が死んでしまったのだから・・。

そして棟居はその望みに賭け東京に戻ります。

その時東京では日本デザイナーコンクールが開かれていました。

その席で、棟居は八杉に恭平が殺されたことを伝えます。

それをいきなり聞かされ失意の八杉はコンクールで大賞を取ったのですが

その受賞スピーチの席で真実を語り始めます・・。なぜか突然に(笑)

そして賞を辞退して授賞式を途中で抜け出し、霧積へ向かうのです。

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出典 pds.exblog.jp

なのでその時点でジョニー殺しの犯人が八杉恭子だと明らかになります。

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出典 summaars.net

恭子はジョニーの存在が世間におおっぴらになり、

過去に黒人と関係があったとバレることを恐れジョニーを殺したのです。

自分が生き抜くためわが子であろうと殺したのです。

当時黒人差別が凄まじいニューヨークのスラム街で

極貧生活を送っていたジョニーにとっての唯一の心の支えは、

いつの日にか、幼い頃に優しくしてくれた、生き別れになった母に会うことだったのです。

そして、その思いは、日が経つにつれ、

生活が苦しくなっていくにつれ、押さえがたいものになるのです。

そんなある日、ジョニーは雑誌で、

日本でデザイナーとして大成功している母の写真を偶然見るのです。

それも強引な設定のような気がしますが・・まぁいいでしょう。

そこで、ジョニーの父は、息子の願いを叶えようと、車にぶつかり

自らの命を投げ出して、示談金を作り日本への旅費を捻出するのです。

そこでオープニングのようによそ行きに着替え清々しい気持ちで

母のいる日本に旅立ったのです。

父の遺志も汲んで日本へ来たジョニーでありましたが

ジョニーを待っていたのは、母の非情過ぎる拒絶であったのです。

ジョニーはただ純粋に母に会うために日本に来ました。でも拒絶されたのです。

ジョニーの母・八杉恭子にとって、黒い隠し子は、

忌まわしい過去の亡霊でしかなかったのです・・・。

その後八杉はジョニーへの殺意を固め、ジョニーをひとけのない公園へ呼び出し

夢にまで見た母との再会を喜ぶジョニーの胸にナイフを突き立てたのです。

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な、なんと酷いことを・・・

でもいかに邪魔な存在とはいえ、そこは我が子。

震える手で刺したナイフは、ほんの少ししか入らなかったのです。

でもそれで母の気持ちを知ったジョニーは、

「ママにとって、僕は邪魔な存在なんだね」と、

自らの手でナイフを胸の奥深くに刺します。

続けざま、

「僕はママが安全なところに逃げるまで絶対に死なない。早く逃げるんだ、ママ!」

もう涙もののシーンとなりこのシーンこそがこのストーリーの核となります。

ジョニーは瀕死の状態にありながら15分も歩き続け、

ホテルニュー大倉の前でついに力尽きる。

意識が消える・・・その寸前のジョニーの目に映ったのは・・

麦わら帽子(英語でストーハ)に見えたホテルのネオン。

ストーハ…。

それがジョニーの最後の言葉であったのです。



いくら過去を消したいといってもねぇ・・

その結末を回想し終えた八杉は棟居達の目の前で霧積の崖から身を投げるのです・・。

渓谷へ落としたあの麦藁帽と一緒に・・。

翌日、八杉の死亡記事を読んだシュフタン刑事はジョニーの実の父親を訪ねます。

既に麻薬依存に陥っていてハーレムの廃墟の中で寝たきりではあったのですが

事の全てを告げると解釈したように首を縦に振り、静かに息絶えました。

シュフタン刑事はその遺体を廃墟の片隅に埋めて花を添えて帰ろうとした直後に

黒人男性に刺され、そのまま動かなくなったのです・・・。

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出典 summaars.net 

そしてこの物語は棟居に関係したものがほとんど死んでしまうことで完結するのです・・・。

2017年の藤原竜也・鈴木京香版『人間の証明』の感想


出典 http://www.tv-asahi.co.jp/ningennosyoumei/

そのドラマ版が藤原竜也・鈴木京香主演で、2017年3月2日、テレビ朝日系で復活し放映され

ましたがあまりそっちの感想といってもなぜかなかったことにされたシーンが多すぎてちょっ

とがっかりです。

個人的に松田優作や岩城滉一の大ファンでやはり見ないわけにはいかず設定やストーリー展開

等々興味深々で見てみたのですがやっぱり違和感は否めずもリメイク版はいらないんじゃない

かと思います。

1977年の松田優作のあのハードボイルドなイメージは

これからも作り出すことは不可能ですから。

現代のタブー視されてる風潮なんて当時はどこ吹く風。

そして岡田茉莉子・松田優作・ジョージ・ケネディがそれぞれ過去に一物を持つ人物を演じ、

当時の日本映画では稀なニューヨークロケが行われたことそしてスケールの大きさもやはりこ

れからも真似できない要因なのです。

あの当時のニューヨークのカーチェイス。

松田優作の名演なくして映画「人間の証明」は語れません。

この映画は森村誠一の「証明」シリーズの記念すべき第一作となり

当時は珍しかったアメリカでのロケも大迫力のサスペンス映画です。

また日本映画の枠を破ろうとする角川社長の意気込みが伝わる映画でした。

それにまだ規制というものが緩かった時代。

思い切りのいいアクションシーンや社会風刺もダイレクトに反映していました。

『人間の証明』は今から41年前の1976年、

森村誠一氏の長編推理小説として発表されました。

この小説は単行本・各社文庫本計で770万部のベストセラーとなっています。

孤高の刑事・棟居という名キャラクターを世に送り出した

「昭和を代表する名作ミステリー」であることは言うまでもありません。

作品にはホテル勤め(特にホテルニューオータニなど)の経験があるため、

ホテルを舞台にしたミステリが多くあります。

この映画は岡田茉莉子・松田優作・ジョージ・ケネディが

それぞれ過去に暗い過去を持つ人物を演じ、

当時の日本映画では稀なニューヨークロケが行われました。

この人間の証明のテーマって一言でいえば

『 母性・・・』

というキーワードに尽きると思います。

ではここからは1977年版とリメイク版の違いを比較していこうと思います。

1977年の映画との比較

まずは突っ込みどころ満載なのは覚悟してましたが

まぁ、時代というのはここまでタブーを作ってしまうものかといささか残念になるものです。

突っ込み①

序盤からは八杉恭子の息子である郡恭平であります。

この息子役は映画ではあの岩城滉一さんなのです。

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出典 pbs.twimg.com

そして岩城さんはひき逃げをしてその時点で一人で死体を埋めていますが

今回のドラマでは八杉恭子と一緒に親子で死体を埋めに行ってます。

当時の若者と今の若者の時代背景の違いなのでしょうが何故か違和感を感じます。

突っ込み②

レイプされたのが八杉恭子であり、それを阻止したのが、

棟居の父親であるが、そこはカットされていましたね。

原作と映画、又テレビ版では設定や登場人物が違う事は多くあります。

テレビの場合不特定多数の人や子供も見るので、子供が出来た原因、

アメリカ駐留軍の関係等気遣って一般的な時代背景だけにしたのだと思います。

なので今回のドラマではあくまで

アメリカ駐留軍退役軍人との出会いと妊娠のみを描いていました。

まぁ、それは事実でそのせいで隠し子ヘイワードが生まれたのだから・・。

でもそれよりももっと残酷な仕打ちを映像にするってさすが昭和です。

そしてこの映画ではどんどん棟居にからむ人間達が自らであったり殺されたりと

どんどんこの世から去っていく・・。そこが良かったのに・・。

なのにこのドラマではその表現や行動はすべてカット・・。

昭和のリアルな残酷さはまったくもって語られてません。

突っ込み③

種さんなんかは 映画では始めっから亡くなってました・・(笑)

でもドラマでは重要なキーマンとして登場してます。

突っ込み④

棟居の父を殺した米兵の一人が米国の警察官で

棟居が渡米したニューヨークで一緒に事件を捜査する

場面もカットされてますし

その警官が最後は棟居ではなく恨みを持った

スラムにいた黒人に刺されて死ぬのです。

そのなんともいえないバイオレンス的な映像は

今回のドラマではすべてカット。っていうか

なかったことになってます・・。

突っ込み⑤

松田優作 の背景が まったく匂わなくて 驚いてしまいました。

黒人と幸せな家庭が始まったのに 旦那が米国へ帰った

では あの優作作品の全体の暗さが出ないのですよ。

最後に個人的に衝撃とともに印象に残ってるシーン

終盤の回想で、八杉恭子がジョニーをナイフで殺すシーン。

ジョニーが

「ママ、僕がそんなに憎いかい・・・」と言いながら、

刺さったナイフを自分でさらに深く刺すシーンは見所ですかね。

なかなかない演出です。

それと最後のシーン、

八杉が崖の上から麦わら帽子を投げ、そして自らも身を投じるのですが、

棟居刑事はそれを暖かく見守ります。

捕まえるという発想ではなくあえて人間としての自己完結を描きたかったのでしょう。

いい時代でしたね、昭和の表現って・・。



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